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マインドフルネスを取り入れた生活とは

最近、「マインドフルネス」という言葉を、よく耳にする事も多くなりました。アメリカでも日本でも、「マインドフルな生活」など「マインドフルな何々」というふうに、使われているのを見かける事はありませんか? そもそもマインドフルネスとは、どの様なものとお考えでしょうか?

私は現在カリフォルニアで、マインドフルネスを基盤にしたセラピーと、日本で生まれた「森田療法」、「内観」を専門にしております。今日は少しこの森田療法と「マインドフルネス」な部分を取り入れた生活について、考えてみたいと思います。

一般的な「マインドフルネス」の言葉の定義は、仏教、特に禅の流れを汲む価値観に基づいた教えで、私の考えるマインドフルネスを取り入れた生活とは「今ここに見るもの感じるもの・現実」に神経を集中させ、自分と周りの環境との波長を合わせた、適切な言動を意識して生活する、そんなライフスタイルではないかと考えます。

ここで1つ具体例を挙げてみたいと思います。

例えばあなたが誰かと話をしているとします。マインドフルな行動とは、相手が伝えようとしている言葉、表情、仕草に注目し、如何に上手く相手の気持ちを受け止め理解しようと真摯に聞くことだと思うのです。しかし相手の話しを少しだけ聞いて、それに対し「こんな風にうまい受け答えをしよう」、とあれこれ考えて、結果相手の話は上の空になったり、相手の話のさわりだけ聞いて、「この人は多分こんな事を言わんとしているのだ」と解釈し、その後の話は聞き流して自分の意見を言った場合、これらはマインドフルな行動ではないと思います。しかし、 これはよくある事で、自分でもついついこの様な行動に出ている事はありませんか?

日本には昔から、「飛ぶ鳥 跡を濁さず」などに代表される様々な格言があります。これの意味するところは、 自分が立ち去る時、そこに居たという痕跡を残さず(整頓してゴミなどを残さない)、次に来る人が気持ちよく使える様にと考えて行動しよう、という様な意味だと思います。これも、仏教的な教えから来ているのではないかと思いますが、私の祖父母の世代に教わった道徳的な格言には、マインドフルネスなものがいくつも有ります。即ち、「マインドフルネス」という横文字は新しいかもしれませんが、上記の様な道徳は、日本の文化の中に元々根付いていたのです。

最近の風潮では、「マインドフルに暮らす」というタイトルなどを、雑誌で見かけることもありますが、ヨガ教室に通ったり、瞑想をしたり、ベジタリアンになったり、という様な事が、マインドフルネスだと思っている方も少なくありません。勿論これらも素晴らしい「マインドフルネスな行動」だと思いますが、本当のマインドフルネスな生活は、ヨガ教室以外、または瞑想をしていない時間でも、如何に目的に沿ってマンドフルに居られるか、振る舞えるかが大切な部分だと思うのです。(もちろん、ヨガも瞑想もマインドフルネス的な、素晴らしいアクティビティなので、取り入れた方がいいと思います。)森田療法は、この目的本位な自己の行動力に着目しています。

では、私たちはヨガ・瞑想の他にマインドフルネスを、どの様に日々の生活に取り入れていけるのでしょうか?

私のオフィスには、よく「Anxiety(極度な不安症・心配性)」やパニック障害に悩む方がお見えになります。そこで、日本の森田療法を基盤にしたマインドフルネス的セラピーを実施しています。クライエントさんは、Anxiousな方々なのですが、殆どの方が「今、ここ」に注意が向かっていないのです。それは彼らがいつも、「ああなったらどうしよう」と、近い将来に、起こるか起こらないかもわからない何かに対して不安を持ち、心配しているからなのです。

もちろん私達は誰でも、今まで体験したことがない行動を起こさなければならない状況では、万が一、失敗した時の事を考えて、「間違いをおかさない様にしよう」と気にする言動は自然だと思います。ただ心配性の人は、この先、起こるかもしれない良からぬ事をあれこれ想像し、石橋を叩いてもまだ橋を渡れない状況にいる事が多いのです。

失敗を避ける為に「今ここで」やる事がある筈なのですが、成功に近づく為に必要な行動ですら、不安な感情に邪魔をされて起こせなくなってしまうのです。

何故そうなってしまうのかと言うと、「この不安をまず先に無くさなければ、行動を起こせない」という正しくない「囚われ」が存在し、本来の目的を達成する為の行動への努力でないズレた所に注意を払ってしまうからです。

従来のカウンセリンやサイコセラピーでは、「如何に不安などのネガティブな感情を直すか」と言うポイントに集中しがちです。人間の感情は、天候の様に自然に変化して行く性質なので、そう簡単にコントロール出来ないものです。元来、我々がコントロール出来るのは、自己の行動なのです。例えば朝早く起きたくなくても、決まった時間までに職場に行かねばならないので、起きたくない気持ちを抱えながらも、頑張って起きていく。必ずしも自分の感情と行動はマッチはしていませんが、目的である「起きて会社に行く」は達成出来る訳です。それを「起きたくなる感情」が起こるまでじっと布団の中にいて、そういう気分になったら起きよう、と構えている人ばかりだとしたら、定時までに出社する人は少ないでしょう。一般的に我々は普段の生活の中で、感情と行動がマッチしなくても、どこかで無意識に(または意識的に)折り合いをつけ、目的達成の為の行動を起こしているのです。ところが、カウンセリング室で悩む方々の多くは「そういう気分にならないうちは、行動出来ない」という思い込みを持っているのです。そして感情と行動が、マッチしていなくても平気な時のことには、気が向いていないのです。そして感情を直そう、ネガティブは消そうとする様な多くのアプローチでは、コントロールが難しい部分(感情)を直そうとする為、上手く行かずセラピーに費やす時間や労力ばかり使ってしまうという悪循環がありました。

しかし私どものオフィスでは、「不安な気持ち」は自然な反応(あるがまま)と受けとめ、万全な自分でなくても、自信が持てなくても、自分の目標に少しでも向かっていける方法を調べていくのです。それはコントロール出来る部分に、焦点を当てていくわかりやすいカウンセリング方法と言えます。

貴方の不安な気持ちが、人生に「待った!」をかけていませんか? 不安や心配がなくなるのを待って、時間だけいたずらに過ぎてはいませんか? 森田療法やマインドフルネス基盤にした方法で、自信をつけていく生き方を一緒に探していきましょう。